2001年10月17日

東京都知事石原慎太郎殿

日の出の森・トラスト運動
共同代表 三輪 啓
大橋光雄
標 博重

抗 議 文

知事は今日までの日の出事件についての対応を反省し、
収用法の事業認定から手を引き校正・透明な住民参加制度をつくれ

 本日は日の出トラスト強制代執行1周年を期して抗義に参りました。
 日の出谷戸沢処分場の場内外の汚染は続いており、また二つ塚処分場の遮水シートの破損の兆候がみられつつあります。トラスト共有地は無くなりましたが問題は全く解決していません。
 また収用に要したという7億とも10億とも云われる税金による日の出事件の学習効果も見られませんし、エコセメントは開業後まもなく破綻することは明らかです。ごみゼロを目指す都や三多摩の政策転換も全く見えません。

 土地収用法は6月国会で一部修正、付帯決議つきで成立しました。石原知事、あなたは日の出の収用事件のさい、葉書1枚・2年半・7億円−これは非常識な公共事業の妨害だ、収用法を改正し、トラスト運動などは潰せと都議会の所信表明でも言明し、また国土交通省に要求しました。
 今回の改正で収用手続きは確かにあなたの要求通り、早く・簡単に・安上がりになりました。そしてあなたは小泉都市再生プロジェクトに便乗した首都圏再生緊急5ヵ年10兆円プジェクトの時代に適合した制度の構築という項でも土地収用法の改正を強調しています。
 あなたの収用法改正に対する異常と思える思い入れは、青山副知事が収用法改正に関しての7月10日づけ都政新報への寄稿で私達の改正案修正運動を「法案関係者の中には改正反対派の行動に備えて身辺警護を強化せざるを得ない人もいた。反対運動もここまでくると、一種の病理現象だ。」と事実に反する誹謗中傷を述べるなどの非常識な態度をとったことに反映しています。石原知事と青山副知事、あなた方の収用法改正に対する異常な執着こそ「病理現象だ。」と私達は確信するとともに、また恐れも感じます。

 石原知事、青山副知事、あなたがたは収用法の国士交通委員会の議事録をお読みになりましたか。まだなら是非お読みください。
 衆参8人の参考人の内、処分組合副管理者石川氏(稲城市長)を除く7人及び改正案に賛成の衆参義員の殆どが公共事業の計画段階から始まる収用の事業認定手続きにおける関係住民軽視をそのままに収用手続さの簡略化は認められないと強い意見を述べました。前都収用委員会会長貫洞氏は日の出事件も収用手続きまでとともに、特に事業認定手続きの全くの住民無視がなければ、住民の対応は違っていたろうと述べています。扇国土交通大臣も計画段階からと事業認定手続きでの住民無視については行政の落ち度を明白に認めました。つまり、青島前都知事の事業認定手続きが間違っていたし、その後の石原都知事の判断と対応も間違っていたのです。違法ではないが適法ではなかったと政府が認めたのであり、都は行政の瑕疵が日の出事件を引き起こしたという反省を国と共有すべきです。あなたは事業認定までの処分組合の住民対応とトラスト運動が何を訴え、何を要求したかを理解しませんでした。
 ここに根本的誤りがあったのです。

 扇大臣は事業認定手続きを事前説明会、公聴会の開催、事業認定について社会資本整備審義会に付議し、その意見を尊重する、事後に認定理由説明会を開催するという改正案を説明するとともに、計画段階からの住民参加、合意形成の努力にむけた法改正をすることを約束しました。このことは付帯決議にももりこまれました。これを実行するため国土交通省は道路事業における合意形成研究会を設置しましたが今回の改正の最大の欠陥はお手盛り事業認定者を継続したことです。ここが1番の問題点でしたが、残念です。
 ところが、青山副知事の新聞記事はこれら公共事業行政の今までの瑕疵についての反省と今後の改善には全く触れず、日の出事件に係わった都民を誹謗中傷するという副知事にもあるまじき非常識な態度をとりました。強く抗議し、謝罪と撤回を要求します。

 石原知事、収用法改正は収用手続きの簡素化というあなたの主張がいれられるとともにあなたに大きなお荷物も背負わせました。あなたは公共事業の計画段階からの都民参加、それも合意形成を前提とした参加を法的に保障しなければならないのです。そしてあなたは「適正な手続きを経た事業にはドンドン収用をかける」といいますが実は都市計画法はじめ処分場建設手続き等事業法、条例、規則等が「適正ではない」のです。不公正、不透明、不適法なのが現状です。これを「だれが見ても公正、透明、これなら住民参加は十分だ、公共事業として適正な手続き、事業内容だ。」と都民の大多数から認められるように直ちに制度の改正に手をつけ、案ができたら都民の意見をきいてください。勿論改正のための委員会をつくり、都民からも委員を公募してください。
 また、公共事業の事業者である知事が事業認定者になるのはどう見ても不公正です。適正手続きを主張する知事は事業認定者を全くの第三者行政機関とする改正案を発議して下さい。

 石原知事、私たちはゴミ問題の解決と日の出の汚染問題が解消するまで住民・市民運動を続けます。またこれからも各種のトラスト運動は発生します。トラスト運動は健全な都民の都政参加であり、象徴であり、反面教師です。発言し、提言する都民の行動を卒直に受け入れてください。これを嫌悪し、誹謗するのは自治体の首長として失格です。幅広い寛容さと鋭敏な市民感覚のもとに、残りの期間、都民本位の都政を勤められることを心から要請します。
 本日までの対応には抗議し、今後については私達の期待を実現するよう要請します。
 以上