2004/3/6 日の出の森・シンポジウム 発言記録
  
ごみも処分場もない未来をめざして
    ―日の出の森から世界へ―

拡大生産者責任こそがごみゼロへの道 
   瀬戸昌之
(東京農工大教授/日の出の森・支える会代表)

●ごみゼロ社会の可能性
「拡大生産者責任」ということばを今日いらしている皆さんはご存知でしょうか。私の今日のポイントはこれだけなんです。そしてそれを中心に、今日のシンポジウムの表題である、「ゴミも処分場もない未来」の可能性を検証したいと思います。
 我々は確かにごみを毎日出しています。まず、新聞紙や古雑誌などの紙ゴミですね。それから食べ残しや料理くずなどの生ゴミです。そしてもう一つはペットボトルやいろいろな容器です。これがだいだいそれぞれ3分の1ずつです。この紙ゴミ、生ゴミ、容器ごみの問題を解決したら、一般廃棄物の問題は消えます。消すことができるか、それをちょっと考えてみたいんです。
 一年間に日本で使われる3100万トンの紙は、そのうち6割がすでに再生されています。1700万トンから1800万トンが再生されているんです。今行政は1トンの紙を燃やして埋めるのに5万円の税金をかけていますから、5万円×1800万で9000億円。1兆円近い税金が、紙再生業者の血の出るような努力で、燃やして埋めずに資源として戻ってきています。
 次に生ゴミですが、生ゴミは全国で水びちゃの2000万トンが出ていますが、これもやはりトンあたり5万円かけて燃やしております。一方で、各家庭で出る生ごみを堆肥化するという運動が、個人的にも、また一部の自治体では組織的にも始まっています。まだ不十分とはいえ、生ゴミを堆肥化して農地に還元するという循環の輪が作られ始めています。
 それから3つ目の容器です。ペットボトルが中心ですが、これがかさ張って、その上、処理にはひじょうにお金がかかる。多くの人はペットボトルを1本120円で買いますが、あれがからっぽになって捨てられたあとの処理に、1本50円から70円が投入されています。
 これらの問題を解決できればゴミゼロは基本的に具体化するはずです。家電製品のごみも出るが、一日あたりにすれば生ごみや紙ごみや容器ごみの数10分の1しかありません。
 
●ねじまげられた「拡大生産者責任(EPR)」

 そこで、今日の拡大生産者責任についてです。日本も加盟しているOECD(経済開発協力機構)は、すでに2001年にゴミ問題に対して「拡大生産者責任」という明確な宣言をしました。メーカーはものをつくって売る以上はその製品に責任をもちなさいというのが「生産者責任」ですが、製品のみならず、それがやがて廃棄されるなら、廃棄の処分まで責任を拡大しなさい、というのが、「拡大生産者責任」です。
 たとえばペットボトル飲料なら処理費用50〜70円を価格に上乗せし、使用後の容器を持っていけば50円返ってくる。そうすれば不法投棄などいっぺんになくなる。紙1トンを売る時に回収と再生のための費用1万円上乗せすれば、燃やして埋める人はなくなるし、その必要もなくなります。家電製品もメーカーに回収と再利用を義務づければ、処理に困るようなものは作らなくなるし、鉄やアルミやプラスチックに分けやすい製品を造るようになり、限りなく一〇〇%に近く資源化され、埋める必要はなくなるわけです。
 日本では昨年廃棄物対策ニ法が成立しました。その副題が「拡大生産者責任は見送る」。笑っちゃいます。しかも、産業廃棄物を一般廃棄物と一緒に燃やしていいというように改悪されてしまいました。循環型の道すじが既に示されているにもかかわらず普及していかないのは「拡大生産者責任」を日本の政財界がねじまげているからなんです。日本はすでにOECDの加盟国で、拡大生産者責任をやります、と世界に宣言しているのですから、そのもたらす大きな意味をみなさんが理解して、そういう方向でゴミ行政を見ていただきたいと思います。

●こんなエコセメントを誰が買う?

 最後に、エコセメントの問題を簡単にいいますと、エコセメントとは焼却灰に石灰入れ燃やして作ったセメントです。ただし焼却灰の中にはいろんな重金属とか塩分とかろくでもないものが入っていますから、相当悪い品質のセメントになります。しかも現在、1年間のセメントの需要は6000万トンを切っていて、あちこちのセメント工場が閉鎖されている。作ったって売れないんです。そしてさらに大きな問題は、価格です。市販のまともなソフトランドセメントというのは1トンつくるのに2800円ですがエコセメントは最低3万円です。こんな品質が悪くて市販のセメントの10倍以上もするものを誰が買います?だから無理やり買わせて道路や端を作らせて国や自治体の仕事に何%エコセメント使わなきゃもう仕事やらないよ、そういう構造が作られることになる。結局われわれの税金がその差額にまた使われるわけです。
 時間がきました。エコセメントは高くて品質が悪い、ということを覚えておいてください。そして、最初の「拡大生産者責任」、OECDの加盟国である日本はこれを具体的に実施しなければいけない、そういうことを国際的に宣言した国ですから、そういう目で、これからのごみ行政を見ていきたいと思います。