二ツ塚処分場建設差止訴訟ー判決報告
(2006年9月13日)

 
一審判決 原告の請求をすべて却下・棄却
 日本に三権分立はないのか!

2006年9月13日/東京地裁八王子支部/小野剛裁判長


 1995年地元住民を中心に166名で提訴した、谷戸沢処分場へのごみ搬入および二ツ塚処分場の建設差し止めを求めた裁判の判決が、9月13日に東京地裁八王子支部で出された。当日は原告や弁護団、支援者などおよそ40名が地裁に集まり、わずかな期待を胸に、判決に耳を傾けた。

判決内容
 しかし判決は原告の請求をすべて却下、棄却。裁判長は主文を読んだあと、判決要旨をおよそ10分間にわたって読み上げたが、その内容は要約すれば、
(1)多摩地域134万トンの多量のごみは処分せざるをえないのだから、ごみ処分場建設には「公共性・必要性」がある
(2)ダイオキシン類や重金属などの検出結果はおおむね環境基準を満たしているから危険とはいえない
(3)第2処分場の遮水シートが破損している可能性はあるが、現在の状況からすれば、生命・健康に被害を及ぼすような危険があるとは認められない、
というもの。被告、処分組合の主張を鵜呑みにした、現場無視、人権無視の判決だった。 「燃やして埋めるごみ行政」の問題性や、他国に比べて甘すぎると指摘されている「環境基準」の危険性、地元玉の内地区でがん死が全国平均の4倍以上にものぼるという調査結果などはすべて無視されていた。

 初めに結論ありきの判決に、私たちの怒りと幻滅は大きかった。けれども、判決の2日前に開いたマスコミ向け勉強会にも、判決当日も、予想を超えて大勢のマスコミ関係者が詰めかけ、今回の判決の意味するものが何なのかを聞き取ろうとしていた。そしていくつもの新聞が大きく紙面を割いて原告側の主張を掲載した。私たちは真実を追求する闘いに負けたわけではないのだ。

 次世代のためにも、ここであきらめるわけにはいかない。今回の判決に対しては控訴することを、すでに原告たちは決めている。
 

原告たちからの発言
 判決の後、小雨の降りそそぐなか小さな公園で開いた集会で、原告たちが判決に対する率直な気持ちを語った。悔しさ
、悲しさのうちにも、今回の判決の問題点や日本社会のありようを冷静に指摘し、これからも活動をつづけていく、という強い意志が感じられる発言だった。

◎悲しさ、悔しさを通り越して何と言ったらいいのかわからない。「いまのところは何も起こらない」というのは一体どういうことか。現実には死んでいる。親しかった人が死んでいる。人数が少なければ死んだうちに入らないのか。水俣のときに国は「二度と繰り返してはならない」と言った。けれども今日の判決は、その繰り返しの始まりになるのだろう。
◎残念で言葉もない。司法に絶望している。私たちは自分たちで調査もつづけてきた。国の環境基準でなぜ安全だと言えるのか。実際にあの自然豊かな山のなかでダイオキシンは検出されている。汚染は現実にある。大勢死ななければ裁判に勝てないのか。
 私たちは「燃やして埋める」ごみ行政に異を唱えて、代替案も出してきた。この判決も私たちにとってはプロセスに過ぎない。これからも全国に汚染を伝える活動をつづけていきたい。
◎ひどい。悔しい。判決要旨はこれまでさんざん聞かされてきた処分組合の言い訳をまたそのまま聞かされただけ。裁判官は現状を何も勉強していない。許せない。
◎この国に三権分立はないのか。国の基準は安全なのか。今日の判決が三多摩、全国の人たちに「これで(今のままのごみ行政で)いいんだ」と思われてしまうことがとても不安だ。
◎冒頭で「公共性と必要性」ということが言われた。そのために、非科学的で現実無視の判決がまかり通る。これは、三多摩のごみがこのまま処理されなくなりますよ、目の前のごみの行く場がなくなりますよ、という脅し。ぼくたちが言ってきたことはそういうことじゃない。「燃やして埋める」のをやめようと言っているだけ。それはできないことじゃない。
 次の世代、これから生まれてくる命、小さな命のためにも、ぼくたちはここであきらめるわけにはいかない。10年、20年後に、この判決が間違っていたということを歴史が証明してくれるはず。運動はつづけます。


弁護団による問題点の指摘

 その後の記者会見で、弁護団は
・処分場の危険性について、原告側に現実の被害の立証が求められている。本来調査は行政がおこなうべきだし、住民と行政では調査能力にも明らかに差があるのに、不公平だ。
・これまでの差し止め訴訟では、現実の被害がなくても、平穏な生活権が侵害される恐れがある場合に差し止めが認められるケースもある。「現実の被害」が求められている点で、ハードルが高く設定されたといわざるを得ない。
・「公共性・必要性」をトップに持ってこられたら反論できなくなる。住民は我慢しなさい、ということ。
・現地評価もデータの読み方も甘すぎる。
・資料開示にふれていない。
などの問題点を指摘した。