10月10日のレポートはここ

10月11日、水曜日
行政代執行という名の強制収用
行政による、あまりにも無責任な、法律も無視した、暴力的で野蛮な行為が
日の出の森・トラスト共有地でおこなわれた

●ようやくおこなわれた「証票」の提示

 
朝6時にはみんな起きだしました。夕べはかなり盛り上がり、眠らなかった人もいたようです。
 
そして9時には東京都が処分組合、ガードマンと一緒に姿をあらわしました。相変わらず、「代執行中です」「危険なので退去してください」と叫び始めました。今日は、こちらの「証票を見せてください」との声に答えて、フェンス際までやってきました。やっと証票の提示です。こちらはそれを読み上げて確認しました。
 それにしても、前日には「(証票の提示は)必要ない」などと答え、住民に法律違反を指摘されて初めて自らの失態に気付く、本当にみっともない限りの行政の対応でした。


回答もなしに、何が「説得」か

 
執行官らが戻ったところをもう一度呼び戻し、申入書を手渡しました。趣旨は、@代執行では、明渡しは出来ないこと、A裁判で係争中なので、決定が出るまで待つように、との2点です。東京都に30分の期限で回答を要求しましたが、彼らが戻ったのは1時間以上たってからでした。
 こちらからは再三にわたって話し合いを求めています。弁護士を含む代表三人がフェンスの外に出て、回答を聞くことにしました。しかし都は時間は三分間、回答も「答えられない」というふざけた態度に終始し、私たちと話し合う気は全くないことが解りました。都はマスコミなどには、説得活動を続けてきたなどと発表していますが、その中身は、「退去しろ」というだけで、説得でもなんでもありません。それともこれが行政の考える説得なのでしょうか。それなら、根拠も示さず安全宣言をするのも解ります。全く同じですから。


●法律違反の強制排除

 午後になって、マスコミなどを通じて、情報が入ります。強制排除に踏み切るらしいとの事、緊張感がみなぎります。
 12時半ごろ、ガードマンがフェンスをはずし始めます。しかもフェンスを押してきます。普通こういう場合自分たちのほうに引くのがやり方です。何が何でも挑発し、混乱させたがっているようです。
 そもそも、都の代執行に、一方の当事者である処分組合が参加しているのがおかしなことです。しかも、処分組合の雇った警備会社「西東京セキュリティサービス」のガードマンが実行部隊です。代執行では、物件の移転は出来ても明渡しつまり人の排除は出来ないというのが常識です。そのうえガードマンは警備業法によって住民運動などに介入してはならないことになっているのです。二重三重の法律違反です。加えて、彼らガードマンはそのほとんどが二十歳そこそこのひょっとしたら未成年もいるような若い男たちでした。かっとなったら何をしでかすか解らない、そんな雰囲気を撒き散らして、私たちに向かってきたのです。


心配が現実に!やはり起きた、ガードマンの暴力

 それは混乱を避けるために、風の塔と野外ステージの間の広場に座り込んだときに、起こりました。私たちは作業の邪魔にならないところで、物件の移転を見守ろうとしました。法的にも、人の強制排除は出来ないはずだったからです。

 しかしガードマンは指揮者の「ベルトを持ってつれ出せ」の声で、襲いかかったのです。

 しかもニヤニヤ笑いながら。なんと卑劣な。私たちが反撃しない事を見越して暴力を振るう。おぞましい光景でした。

 すぐにガードマンの責任者岡田部長に、抗議しました。「こいつらサディストじゃないか」「すぐさがらせろ」幹部たちが慌てて制止して、焚き火のほうに押すなとか指示しています。訓練もされていない、かっとなりやすい若者を、私たちにけしかけた結果がこれです。岡田部長自身混乱するとコントロールできないとわかったのでしょう。これ以降「どんなに時間がかかってもいいから、退去してくれ」と態度が変わりました。ここでやっと交渉の余地が出来たのです。
 私たちは、ガードマンが強制排除の実行部隊である限り、混乱は避けられないと判断しました。一定の時間を確保し、最後の集会で言うべきことを言い尽くして、退去する。これが私たちの下した決断でした。決して、執行官らが言うような、説得に応じて自主撤去したなどということではありませんでした。無念をかみ締め、断腸の思いでやむなく退去したのです。全国の、世界の皆さんにこの無念さをわかって欲しいと思います。行政はついに私たちの思いの一片すらわかろうとはしなかった。行政の責任はあまりにも大きいと言わなければなりません。


●集会と「トラスト運動続行宣言」
  〜森への思いを全国へ伝えるために〜
 

 3時までの集会では、森への思いとそれ以上にガードマンの若者たちへの呼びかけが語られました。私たちの運動の誇れるところだと思います。

 「故郷」の歌声が森の隅々にまで流れる中、私たちは共有地をあとにしました。「必ずまた帰ってきて、また森にこの地を還すからね」想いは一つでした。

 馬引沢には、数十人の仲間が待っていました。やれることはやったと言う思いと、なぜここまでなのかというやりきれなさに、幼子のように泣きじゃくる人。抱き合う人。しかし駆けつけた大橋共同代表のトラスト運動続行宣言、一日の闘いの報告と続く中で、今日の闘いを明日へつなげようという意思をはっきりと感じました。

全国のこころある人々に、伝えたい。私たちの運動は、ここからまた始まります。この流れに合流してください。皆さんの力を過小評価しないように。私たちはこの社会をよりよいものにする力を、既に持っているのです。(S.H.)