災害廃棄物を東京で焼却することについての決議
(2011年10月8日付け)と
その後の意見表明【災害廃棄物の処理を急ぐな】
(2011年12月5日付け)
■災害廃棄物を東京都は受け入れて焼却することを表明しました。詳細は不明ですが、23区のごみ発電装置のある清掃工場及び三多摩地域では7か所 の清掃工場(その後に全ての清掃工場にも要請があるかもしれないという情報あり)、及び民間の焼却工場で燃やされるということのようです。
 焼却灰は23区では中央防波堤内に埋め立てられ、三多摩では焼却灰の値が8000Bq/kg以下であればエコセメント化されてしまい、広く拡散 していくでしょう。災害廃棄物は一般廃棄物と混ぜて焼却されるようなので、おそらく8000Bq/kgになり、エコセメント化処理されるでしょう。

 10月8日の講演会後、参加者一同で「災害廃棄物を東京で焼却することへの疑問と考え直すことを求める決議」(下記参照)を挙げました。
ただ、講演会の後、さまざまな議論があり、被災地の方々と思いを共有し、共に放射能汚染の問題を考えていこうというスタンスが抜け落ちていたのではないかという意見もありました。
その後の運営委員会での話し合いを経て、当会副代表の大沢ゆたかが、災害廃棄物の受け入れに関しての考え方をまとめました(「災害廃棄物の処理を急ぐな」)ので、どうぞお読みください。

災害廃棄物を東京で焼却することへの疑問と考え直すことを求める決議
     決議文 (テキストPDF


災害廃棄物の処理を急ぐな

立川市議 大沢ゆたか(2011.12.5)

 ■東京都の考えた災害廃棄物の受け入れ

石原都知事は大震災を天罰だと言ったお詫びのためか、災害廃棄物の広域処理にはいち早く対応を決め、都議会も承認してしまいました。しかしその持つ意味は分かっていたのでしょうか。地震と津波によって発生した災害廃棄物(可燃性廃棄物(木くずなど)、廃畳、混合廃棄物、焼却灰)は岩手県では約500万トン、宮城県では1600万トン、福島県では230万トンだと言われています。福島県の廃棄物は放射線量が高いために石原都知事も受け入れるとはしなかったようで、岩手と宮城の災害廃棄物を2年半で50万トン受け入れるというのです。

 しかし心配なのは一体どれくらいの放射線量の廃棄物が来るのかでしょう。都は一応調べたとは言っていますが、試験した焼却炉の形式の違いがあったり検査のやり方がずさんだと思えますし、検体数が少なすぎます。また、排ガスからは放射能は検出されないとしていますが、排ガスの放射性物質の測定についてはサンプルの吸引時間が原子炉等の放射性物質測定のためのサンプリング時間よりはるかに短いと指摘しているジャーナリストもいます。

 ■エコセメント工場の下水道放流水から高濃度の放射能(三多摩特有の処理  方法)

さらに、日の出町に集められる焼却灰で造られるエコセメントの安全性の問題と製造過程で排出される排気ガスや排水に有害物が含まれていることに加え、放射性物質の近隣地域への拡散が大きな問題になります。今回はエコセメント工場からの公共下水道への排水と、製造工程で山元還元される重金属に放射性物質が存在することが、資源循環組合の調査で判明しました。しかし、そのエコセメント工場での大気への放射性物質の排出はないとしていますが本当にそうでしょうか。

 公共下水道への放射性セシウムの合計値は7月〜10月までの値が678Bq/kg〜376Bq/kgと検出が続いています。千葉県にある太平洋セメントのエコセメント工場からは排水に約1500Bq/kg程のセシウムが検出されたらしく千葉県が排出しないよう求め、同工場は操業を停止しました。しかし、東京都は日の出町のエコセメント工場からの排水は操業停止をさせていません。その理由として都は「千葉県は海に排出、エコセメント工場は公共下水道に排出だから、それを規制する法律はない」としているのです。

 結果的に三多摩では高濃度のセシウム入り排水を公共下水道に流し、これは結果的に八王子市小宮にある下水処理場に集まってしまうのです。今度はそこで高濃度のセシウム入り汚泥が発生し、汚泥の焼却によってさらに高濃度の汚泥が出来ることと周辺への影響が考えられます。

 ■下水処理場からのセシウムの飛散はないか

 立川市では空間放射線量も0.06-0.10Bq/kg程度とそれほど高いところがありませんでした。また、ミニホットスポットと呼べるような高放射線量の場所も見つかっていませんでした。しかし、11月末に市民からの通報で立川市陸上競技場の物置の雨どいの所から0.30-0.42μSv/kgの値が検出され、市はさっそく除染しました。これは福島原発由来のものだったのでしょうか?私はそうは思えません。私は6月にやっと放射線量測定器を入手し、立川市内のあちこちを測ってきたので、陸上競技場の周辺が高いことは分かっていました。

 しかし、その競技場のすぐ西側に下水処理場があるのです。そこでは下水汚泥の焼却が続いています。(汚泥は高濃度のセシウムを含むので夏以降搬出できず保管され続けています)

その下水処理場周辺は0.08μSv/kg程度と安定しています。数100メートルしか離れていないところでこれだけ違うのはやはり競技場周辺に下水処理場の排煙が影響している可能性があります。ということは放射性物質による2度目の拡散があるのではないかということです。

 同処理場では今後、焼却汚泥を江東区にある中央防波堤に埋立をすることになるようです。そのため現在の湿った状態の汚泥を乾燥状態の汚泥にするために焼却炉の改修が補正予算で出てきました。粉体運搬用のタンクローリーで吸引するので周辺に飛散することはないと説明をしていますが、本当でしょうか。

 ■放射能のデータを正確詳細に示すことが必要

 災害廃棄物を都内で処理しようとするならば、正確なデータを示してほしい。汚染地図と災害廃棄物との汚染データを照合をすること、受入れ前と後の調査の正確なデータの公表、受け入れの量は現在の都内の焼却量の5-6%程度のようですが、三多摩では全ての自治体で受け入れるわけではないので、自治体のよっては10%程度の自治体も出てくるでしょう。住民の声を聴く仕組みを作り、実働中でも問題が起きれば中止するようにすることなどは最低限必要でしょう。

さらに現在の法律は、私たちの日常の社会の中に放射性物質が入り込むことが想定されていない中での法体系ですから、法律の見直しをしていくことが必要です。現在の処理方法は現状追認の都合のいい解釈と基準で処理しているように見えます。環境中に放出される放射能は、外部被ばくや食品摂取などによって内部被曝にもつながります。子ども基準の見直しが求めらますが、ベラルーシ基準に合わせるのが順当だと思われます。災害廃棄物処理に関しても、内部被曝への影響まで考慮して影響が出ないと言えなければならないでしょう。

 こうした疑問が解決するならば広域処理も良しと考えますが、解決の見込みが立つまでは拙速に災害廃棄物の処理を急ぐなということです。低線量被ばくは子どもたちにとって取り返しのつかない弊害を与えます。放射性物質の全国への広く薄い拡散はするなということです。

災害廃棄物量(万トン)

セシウム・焼却灰(Bq/kg)

セシウム・飛灰(Bq/kg)

空間放射線量(μSv/h)

岩手県

508

31〜1640

86〜30000

宮古市 0.07-0.10

宮城県

1584

560〜14347

311〜2581

女川町 0.07-0.14

福島県

228

不検出〜16640

204〜95300


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