都庁アクション 2001年10月17日

都庁アクション 2001年10月17日(水)12:00~

日の出の森・トラスト共有地行政代執行から1年都庁で抗議行動と要請行動

 昨年の強制収用から1年が過ぎた10月17日(水)、およそ20名の地権者が都庁前に集まって、日の出のごみ処分場問題が何も解決していないことに対する抗議のチラシを配り、東京都の職員や都庁へ来訪する都民、通行人にアピール行動を行いました。

 この日はあいにくの雨天でしたが、参加者は次々とマイクをにぎって石原都知事の代執行の判断が間違っていたことや都知事が執着し国会で改悪が強行された「土地収用法」の問題点、周辺環境の汚染の実態などを訴えました。そして、日の出処分場の問題は何も解決していないことを訴え、知事の反省を求めました。

 (それにしても、相も変わらず一列に並んで私たちを監視するガードマンの姿は、住民を敵視する石原都政の体質を自ら証明しているようで、滑稽ですらありました。)

 その後、日の出処分場周辺の環境調査をした「たまあじさい」のメンバーたちが、福士よしこ都議の部屋で環境部の職員に、調査結果の説明を行い、要請書を渡しました。石原都知事にあてた抗議文については知事室へ届けました。

要 請 書

2001年10月17日

東京都知事石原慎太郎様
東京都環境局局長中野英則様

日の出の森・水・命の会
代表 中西四七生

要 請 書

日の出処分場からの焼却灰飛散による周辺汚染の実態報告および要請

この文書による要請内容について、日の出の森・水・命の会代表中西四七生に対し、2001年11月31日までに回答するよう、要請します。

■日の出処分場からの焼却灰飛散による周辺汚染の実態

 1984年に開場された日の出町谷戸沢処分場は全国の内陸式管理型処分場のモデルとして出発している。したがってここで起こっている汚染が処分場の構造的な問題であるならば全国の処分場の問題に遅かれ早かれ波及することになる。日の出の処分場の問題は、これまでに日本環境学会を始め多くの専門家のかたがたの調査分析によりすでに地下水汚染が構造的な問題として指摘されてきた。すなわち処分場に降った雨水が、ダイオキシンや重金属類などのあらゆる有害物質が含まれたごみの中を通り抜け、浸出した水が遮水シートの破損により地下水を汚染していることが処分場周辺の水質や地質調査により明らかにされてきた。この地下水汚染がこれまで処分場の中心的な問題であった。しかしその後処分場近隣の地域にガン死の多発がきわだちはじめ、これまでの地下水汚染では説明がつかない新たな問題がもちあがった。

・調査の発端

ガン死の多発した地域は谷戸沢処分場の南西側に位置する沢沿いの百戸ほどの集落である。もともと里山を抱えたこの地域はまさしく桃源郷という言葉が似合っていた。ここで行われる葬儀にしても、その多くが天寿をまっとうしたお年寄りものであったと聞かされていた。しかしここ最近は必ずしもそのようなものでなく若い人やガンで亡くなるケースが目立ち始めたと地域の人々のうわさになり始めていた。私たちはとりあえず地域の人たちからの聞き取りでガンの死亡率を調べたところ、日の出町の中でも飛びぬけて、さらには全国のがん死亡率の4倍を超えていた。

処分場の埋め立ては周囲より低い谷底で行われ、その日のうちに覆土されるということでこれまで焼却灰が周辺に飛散することなどを心配したことがなかった。事実日の出の二つ目の処分場の建設のための環境アセスメントの予測にも大気汚染の項目では建設工事に伴う土砂や埋め立て後の覆土の土砂の飛散を予測はしているものの焼却灰の飛散は予測されていなかった。

しかし

1. 焼却灰は非常に細かい微粒子(10ミクロン以下がほとんど)で、ひとたび舞い上がると日常経験する物体が重力にしたがって落下するような振る舞いではなく、むしろ気体のように周辺の気流にしたがって浮遊するものであること。

2. また山間部には局地的に地形や日射の有無による熱や放射冷却によっておこる上昇あるいは下降する風が発生すること。

3. また夜間の放射冷却により汚染物質が冷気により濃縮されて地上付近に停滞すること。

などから谷底に埋めたてられる焼却灰も谷を上り周辺や広域に飛散して大気汚染を引き起こすであろう事を予測し、ガン死の多発との何らかの関連を推測した。

 そこで私たちはこの仮説を実証するためにこの2年間気象調査を主とした環境調査を試みた。日の出と同じような処分場は全国で3、441ヶ所に及ぶとされている(厚生省(現在の厚生労働省)に内陸式管理型最終処分場の設置の許可および届けいれがされた数。平成8年年度末現在)。したがって処分場の地下水汚染や大気汚染が構造的な欠陥によるものであることを考えると今や日本全土で廃棄物処分場による焼却灰の地下水および大気汚染が蔓延していることになり、さらに将来ますます汚染が顕著になることが予測される。

・調査始まる

そこで処分場が発生源となっている焼却灰の大気汚染について私たち住民による調査の概要を報告する。処分場からの焼却灰飛散のメカニズムについては後で紹介する別紙資料「たまあじさいは見ていた」を参照していただきたい。

今回の調査はこのメカニズムを実証し、汚染の実態を検証するためのものである。そしてこの調査は処分場周辺の住民が自分達の暮らしている環境が処分場によってどのような影響をこうむっているかを検証しようという自発的な思いから出発している。

1998年春ごろより、気象や環境問題の専門家、環境総合研究所所長の青山貞一氏、気象庁の中田隆一氏、東北大学名誉教授の近藤純正氏の助言を受けながら活動の内容などの検討をする準備を始めた。1999年3月に会を発足させ会員募集と活動を開始した。活動期間を2年間と限定し、前半の1年間は観測調査活動を中心に、後半の1年間は観測・調査の分析とまとめの活動に費やした。

・調査の内容 

観測・調査活動は、

① 処分場周辺の風の動き(局地風)の観測や、それとの関係で広い範囲での風の動き(一般風)の気象調査

② 処分場類似地形を利用した熱や地形による風の流れのシミュレーションや風洞による微粒子の挙動実験、風船を使っての気流調査

③ 処分場から飛散・放出している物質やガスの採取・分析

④ 周辺への具体的な影響としての周辺および横浜市や町田市などの日の出町以外の処分場の植物の観察・調査

⑤ 調査活動をより科学的視点で取り組むため気象関係などの専門家による学習・講演会の開催などであった。

・調査で明らかになったこと

これらの調査・分析を通して検証できたこと、新たな事実がわかったことは、

① 焼却灰の場外飛散のメカニズムおよび季節や地形によって飛散する方向および地域、

② 飛散した焼却灰の周辺地域での夜間に濃縮するメカニズムおよび汚染が停滞しやすい地形や気象条件、

③ 霧や雨による河川の汚染。飛散した焼却灰が夜間に周辺の谷に霧が発生する。夜間空気が冷えて重くなり汚染物質を濃縮して谷に下りてくるとまだ暖かい川の水に出会うと水面が急に蒸発してできる蒸発霧や冷たい空気が水面のあたたかい湿った空気と混じってできる混合霧が発生するこれらを総称して谷霧というがいずれにしても焼却灰が核になって細かい霧の水滴ができる。この霧が秒速5cmで谷川にゆっくりではあるが確実に落下し河川を汚染する。また上空に舞い上がった焼却灰が核になり雨として川に流れ込み(レインアウトと呼ばれている。)あるいは空気中に浮かんでいる焼却灰が雨滴に取り込まれ(ウォシュアウトと呼ばれている。)河川に流れ込みこれを汚染する。これは日の出町の行った調査で町内河川から高濃度のダイオキシンが検出されたこととよく符合している。

④ 飛散した焼却灰は日中暖められた谷風によって谷を上りあがるがこれが東京湾から吹く都心からのオゾンなどが混じった広域の海風に合流して一般風の向きにより、碓氷峠を越えて上田、長野、日光、大月方面などに達し広域に汚染している。

⑤ 処分場周辺で捕獲した粒子の中から焼却灰が多数確認できた。北里大学の二重作教授に電子顕微鏡を使って微粒子の元素分析をお願いした結果、微粒子の成分から焼却灰であることが判明したものが多数存在した。

⑥ 処分場周辺の植物に葉の変形、葉の脱色葉の先端の枯死、葉に多くの穴があく現象、葉のカビの多発、季節外れの落葉、芽先の壊死、植生の弱りなどの異変が見られた。これらの現象は通常の山地、人家の近く、街中でも時々見られるもので処分場周辺に特有な物ではない。しかし、 1.気象的あるいは地形的な位置から処分場からの影響が著しいと思われる地域にこのような異変をもった植物が面的に多数存在したこと。 2.他の処分場周辺にも共通した異変が見られたことから処分場の影響による植物異変と判断した。

■要  請

 この活動を通じて明らかになったことを踏まえて、私たちは東京都知事および東京都環境保全局に対して廃棄物の処理および清掃に関する法8条に基づき下記の要請をする。

(1) 処分組合に対して、現在の埋立作業を見直し、焼却灰の取り扱いについては、大気汚染法のアスベストと同程度の密閉保管をすることを指導、及びその実行を監督すること。

(2) 地域住民を交えて処分場周辺の環境調査をすること。

(3) 処分場周辺の住民の疫学調査と健康対策を確立すること。

(4) 巨大な消費都市のごみ最終処分場を過疎地や水源地に押し付ける社会的不公平の是正と環境政策を見直すこと。

(5) 生活の中で使われている化学物質をコントロールし、無害化の方策を策定すること。

(6) 出たごみを処分する後追いの施設整備型の清掃事業を根本的に見直すこと。

(7) 処分組合に対して情報公開条例の即時制定を指導すること。


抗 議 文

2001年10月17日

東京都知事石原慎太郎殿

日の出の森・トラスト運動
共同代表 三輪 啓
大橋光雄
標 博重

抗 議 文

知事は今日までの日の出事件についての対応を反省し、 収用法の事業認定から手を引き校正・透明な住民参加制度をつくれ

 本日は日の出トラスト強制代執行1周年を期して抗義に参りました。

 日の出谷戸沢処分場の場内外の汚染は続いており、また二つ塚処分場の遮水シートの破損の兆候がみられつつあります。トラスト共有地は無くなりましたが問題は全く解決していません。

 また収用に要したという7億とも10億とも云われる税金による日の出事件の学習効果も見られませんし、エコセメントは開業後まもなく破綻することは明らかです。ごみゼロを目指す都や三多摩の政策転換も全く見えません。

 土地収用法は6月国会で一部修正、付帯決議つきで成立しました。石原知事、あなたは日の出の収用事件のさい、葉書1枚・2年半・7億円-これは非常識な公共事業の妨害だ、収用法を改正し、トラスト運動などは潰せと都議会の所信表明でも言明し、また国土交通省に要求しました。

 今回の改正で収用手続きは確かにあなたの要求通り、早く・簡単に・安上がりになりました。そしてあなたは小泉都市再生プロジェクトに便乗した首都圏再生緊急5ヵ年10兆円プジェクトの時代に適合した制度の構築という項でも土地収用法の改正を強調しています。

 あなたの収用法改正に対する異常と思える思い入れは、青山副知事が収用法改正に関しての7月10日づけ都政新報への寄稿で私達の改正案修正運動を「法案関係者の中には改正反対派の行動に備えて身辺警護を強化せざるを得ない人もいた。反対運動もここまでくると、一種の病理現象だ。」と事実に反する誹謗中傷を述べるなどの非常識な態度をとったことに反映しています。石原知事と青山副知事、あなた方の収用法改正に対する異常な執着こそ「病理現象だ。」と私達は確信するとともに、また恐れも感じます。

 石原知事、青山副知事、あなたがたは収用法の国士交通委員会の議事録をお読みになりましたか。まだなら是非お読みください。

 衆参8人の参考人の内、処分組合副管理者石川氏(稲城市長)を除く7人及び改正案に賛成の衆参義員の殆どが公共事業の計画段階から始まる収用の事業認定手続きにおける関係住民軽視をそのままに収用手続さの簡略化は認められないと強い意見を述べました。前都収用委員会会長貫洞氏は日の出事件も収用手続きまでとともに、特に事業認定手続きの全くの住民無視がなければ、住民の対応は違っていたろうと述べています。扇国土交通大臣も計画段階からと事業認定手続きでの住民無視については行政の落ち度を明白に認めました。つまり、青島前都知事の事業認定手続きが間違っていたし、その後の石原都知事の判断と対応も間違っていたのです。違法ではないが適法ではなかったと政府が認めたのであり、都は行政の瑕疵が日の出事件を引き起こしたという反省を国と共有すべきです。あなたは事業認定までの処分組合の住民対応とトラスト運動が何を訴え、何を要求したかを理解しませんでした。

 ここに根本的誤りがあったのです。

 扇大臣は事業認定手続きを事前説明会、公聴会の開催、事業認定について社会資本整備審義会に付議し、その意見を尊重する、事後に認定理由説明会を開催するという改正案を説明するとともに、計画段階からの住民参加、合意形成の努力にむけた法改正をすることを約束しました。このことは付帯決議にももりこまれました。これを実行するため国土交通省は道路事業における合意形成研究会を設置しましたが今回の改正の最大の欠陥はお手盛り事業認定者を継続したことです。ここが1番の問題点でしたが、残念です。

 ところが、青山副知事の新聞記事はこれら公共事業行政の今までの瑕疵についての反省と今後の改善には全く触れず、日の出事件に係わった都民を誹謗中傷するという副知事にもあるまじき非常識な態度をとりました。強く抗議し、謝罪と撤回を要求します。

 石原知事、収用法改正は収用手続きの簡素化というあなたの主張がいれられるとともにあなたに大きなお荷物も背負わせました。あなたは公共事業の計画段階からの都民参加、それも合意形成を前提とした参加を法的に保障しなければならないのです。そしてあなたは「適正な手続きを経た事業にはドンドン収用をかける」といいますが実は都市計画法はじめ処分場建設手続き等事業法、条例、規則等が「適正ではない」のです。不公正、不透明、不適法なのが現状です。これを「だれが見ても公正、透明、これなら住民参加は十分だ、公共事業として適正な手続き、事業内容だ。」と都民の大多数から認められるように直ちに制度の改正に手をつけ、案ができたら都民の意見をきいてください。勿論改正のための委員会をつくり、都民からも委員を公募してください。

 また、公共事業の事業者である知事が事業認定者になるのはどう見ても不公正です。適正手続きを主張する知事は事業認定者を全くの第三者行政機関とする改正案を発議して下さい。

 石原知事、私たちはゴミ問題の解決と日の出の汚染問題が解消するまで住民・市民運動を続けます。またこれからも各種のトラスト運動は発生します。トラスト運動は健全な都民の都政参加であり、象徴であり、反面教師です。発言し、提言する都民の行動を卒直に受け入れてください。これを嫌悪し、誹謗するのは自治体の首長として失格です。幅広い寛容さと鋭敏な市民感覚のもとに、残りの期間、都民本位の都政を勤められることを心から要請します。

 本日までの対応には抗議し、今後については私達の期待を実現するよう要請します。

 以上

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